初入店

27番。

「27!!」

その瞬間、心の中で叫んだ。

ヤッター!!!!

前に顔を戻すと、セキュリティの方とひとみさんが何やらコソコソ話している。

空気が一瞬で変わった。

セキュリティの方がこちらを見て言った。

「お兄さん、初めてですか?」

心臓が跳ねる。

「はい、初めてです!」

その瞬間、自分でも分かる。

あ、これ…空気やばい。

初並びの自分でも感じ取れる不穏さ。

番号が当たっても入れないことがある世界。

それが“ゴローズ”だ。

するとすぐ後ろにいた親友が、間髪入れずに前へ出る。

「自分、何回も来てます!連れです!」

そう言いながら、自分の身につけている ゴローズ のアイテムをさりげなく見せる。

その一言で流れが変わった。

セキュリティは少し不満そうな顔をしながらも、

「13時集合で!」

その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けた。

近くのボランティアの方が手首にリストバンドを巻いてくれる。

そこには――

27

そして、二人の印。

その文字がやけに誇らしかった。

“店に入れる権利を得た”

あの瞬間の感覚は、今でも忘れられない。

正直、あの時は思った。

自分一人だったら、たぶんダメだった。

当時は「今日はごめんなさい」「その番号は入れません」と言われることも普通にあった時代。

番号=確定ではなかった。

親友がいてくれて、本当に救われた。

現金を下ろしに今はもう無い一蘭近くのゆうちょATMへ直行。

ゴローズに行く=現金勝負。

ゴローズでの支払いは現金のみ

震える指で大金を引き出す。

そのままハンバーグ屋へ。

ランチを食べながら、二人で当選の余韻を噛み締める。

「マジで入れるな…」

何度も確認するように言い合った。

そして12時50分。

店前に順番通り整列。

周りの方に「何番ですか?」と聞いて回って自分の場所を見つける。

パイプレールに腰掛け、2階にある店を見上げる。

じっと見つめていると、親友が小声で言う。

「あんま見るな。」

「なんで?」

「店の人、窓から下見ることあるから。」

ゾクッとした。

すぐに目を逸らす。

この世界には“見られている感覚”が常にある。

13時20分、シャッターが上がる

セキュリティの方がシャッターを開ける。

最初の7人が呼ばれる。

この時代は今みたいな一人ずつ接客ではない。

中に入れるだけ入って、前の人の買い物を後ろで見守るスタイル。

会話も丸聞こえ。

何のアイテムが出ているかも全部見える。

「あ、あれ今日あるんだ…」

頭の中で必死に整理する。

約1時間。

最初の7人が終了。

そしてまた次の7人。

それを3回繰り返し――

ついに4回目。

「27番!」

きた。

店内に4人が入り、自分たちは外階段で待機。

セキュリティの方がリストバンドをカットする。

“覚悟の音”がした。

チョキン。

後戻りはできない。

先頭の人。

2番目の人。

階段を降りていく背中を見送る。

そして――

ついに。

ゴローズ の店内に足を踏み入れた。

あの瞬間の匂い、木の質感、静かな緊張感。

全部、今でも鮮明に覚えている。

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